【第3回】 専門家に聞く!LP運営のDX推進の難しさと成功事例

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CCMLABO編集部が「これからのECにおいてLPはどうあるべきか」をLPの本質的な役割から紐解き、データやAIを活用してLP運営を進化させる方法や事例を特集する「データとAIの力でお客様をおもてなし!「ECの心地よい顧客体験」をつくるDX推進」。

最終回となる今回は、データとAIを使ったLP運営のDXを推進する専門家である株式会社mynet.ai執行役員の池田様にお話しを伺います。インビューはCCMLABO編集部のヨクキクが担当しました。

LP運営のDX推進の難しさと成功事例

ヨクキク:池田さん、本日はよろしくお願いします。

池田:よろしくお願いします。

ヨクキク:池田さんは、どのようなお仕事をなさっているのですか?

池田:私は現在、株式会社mynet.aiで、AI・データ分析を使ってLP等のマーケティングコミュニケーションのDXを実現するソリューション「OptimRobo」を担当しています。ツールとしての「OptimRobo」の販売だけではなく、クライアント企業のマーケティング責任者の方と共にDXを推進するプロジェクトを複数手掛けています。

ヨクキク:今回は本特集のテーマであるEC分野でLP運営のDXに成功した事例を伺いたいのですが、EC分野ではどのようなクライアントが多いですか?

池田:ECの分野ですと、健康食品や化粧品を扱われているクライアントが多いですね。

ヨクキク:なるほど、ECの王道とも言える商品を扱われている企業をクライアントに持たれているわけですね。今年はDX元年と言われていますが、池田さんのクライアントでもLPの運営でデータ活用のニーズが高まってきているな、という実感はありますか?

池田:データ活用へのニーズは確実に高まっています。ただ、データを活用しなければいけないことはわかっていても具体的にどのようなアクションを起こせばいいかわからなかったり、実は効果に懐疑的だったりする企業は意外に多いように感じています。

ヨクキク:LP運営のDXプロジェクトを進める中で、特に難しい点は何ですか?

池田:大きく分けて2種類あります。1つ目は先ほどお話ししたデータを活用したLPの改善活動に対して懐疑的であるケースです。長年営んでいる事業において、特にマーケティング責任者の方やブランドマネージャーの方は、自社商品のお客様を深く理解している、という自負があります。実際、どのような人が自社のターゲットで、どのような課題を持ち、自社商品を使ってどのように解決できるのか、というストーリーについては本当に詳しい。そして、マーケティング戦略についても正しい場合が多いです。

ヨクキク:深くお客様を理解していて、正しいマーケティング戦略があっても、LP運営のDX推進がうまくいかないことがある、ということですか?

池田:はい。深くお客様を理解しているから、データを見るまでもないと考えてしまう方も少なくないのです。確かに、商品の購入データの統計を見ても、すでにわかっていることが確認できるだけで、次第に必要性を感じなくなってしまう状況はわかります。しかし、戦略レベルのマーケティングリサーチやデータ分析とLP運営のデータ活用は少し目的が違います。LP運営においてはお客様のことが「わかる」だけでなく、それを「LPで正確に表現できているか」と「お客様に意図した通りに伝わるか」という観点が必要です。複数のLP案から1つを選ぶときに、「お客様が意図した通りに受け取ってくれるか」という点においては、経験的に最も良いと考えたLPが実は最良でない場合が多くあるのです。その答えはデータの中にあります。お客様の反応としてのデータをきちんと見ることが必要なのです。この必要性を伝えることが、1つ目の難しさです。

ヨクキク:2つ目はどのような難しさですか?

池田:2つ目は、すでにDXできていると考えているケースです。LP運営のDX推進の具体的なアクションとしてA/Bテストがありますが、すでにA/Bテストを実施されている企業では、自社のLP運営のDXが完了していると考えている担当の方もいます。

ヨクキク:A/Bテストを実施すること=DXというわけではないのですか?

池田:A/Bテストを実施することと、A/Bテストの効果を十分に引き出せることは違います。A案とB案を表示してCVRが高い方が良いLPである、だけでは不十分です。正しくA/Bテストを実施して、その効果を十分に引き出すには、結果指標であるCVR以外にいくつもKPIを設定して、それぞれのLPでKPIがどのように変化するか、データを細かく分析する必要があります。データ分析からお客様に何が伝わって、何が伝わらなかったのかを把握して、LPを通じたお客様とのコミュニケーションに関する仮説を常に修正し、LPを細かく改善していくことが必要です。そうすることで、結果指標だけに振り回されずに、成果が出る方向に着実に改善できます。このデータに基づく改善活動が、DXであり、A/Bテストの真の効果です。

ヨクキク:なるほど、DX推進にはマインドセットと高度なデータ分析技術の両方が必要なのですね。実際にOptimRoboを導入することで、上記のような課題を乗り越えてLP運営のDXに成功した事例はありますか?

池田:はい、最近印象的だったプロジェクトとして、ダイエット用補助食品の通信販売のクライアントで、マーケットトレンドの変わり目をAIが即座に捉えた事例があります。

ヨクキク:『AIがマーケットトレンドの変わり目を捉えた』すごく興味深いです。具体的にはどういう成果があったのでしょうか?

池田:そうですね。マーケットは常に変化しますが、簡単に言うと、AIがマーケットの変化を的確に捉えてLPの表示比率を修正し、CVRを向上させることができたという事例です。

ヨクキク:もう少し、噛み砕いて教えていただけますか?

池田:では、本題に入る前に、背景から順を追ってご説明しますね。

ヨクキク:はい。順番にお願いします。

池田:今回お話しするダイエット用補助食品はかなりのロングセラーで、何年もの間その会社の目玉商品でした。たぶんヨクキクさんも一度は聞いたことがあると思います。(実際にヨクキクも聞いたことがありました。有名ブランドでした。)しかし、ダイエット系健康食品の通信販売の競争が年々激しくなり、緩やかにCVRが低下していたそうです。そして今年に入ってからCVRの落ち込みがよりひどくなり、解決策はないか模索されていました。

ヨクキク:ブランド力のある商品でも競争に晒されて、以前のような売上が維持できなくなっているのですね。そこで、池田さんのところに相談が来た、と。

池田:その通りです。AIを使ってCVRを高めることができるソリューションの話を聞きたいとご連絡を頂き、一通りご説明しました。ここで、先ほどお話しした1つ目の難しさにぶつかります。

ヨクキク:一つ目。データやAIに懐疑的なクライアントだった、ということですか。

池田:はい、導入のプロセスでLP案を作成し、データに基づいてAIが表示比率を自動で最適化する、とご説明したところ、「自社の顧客も、一番刺さるLPも、自分たちが一番よく知っている」とおっしゃって、AIと言ってもそんなものかと、がっかりされていた様子でした。

ヨクキク:早くも話が終わってしまいそうですが、どうやってOptimRobo導入まで漕ぎ着けたのですか。

池田:まずは、そのダイエット用補助食品のことを詳しくヒアリングしました。初回の打ち合わせの後半を全てヒアリングに当てて、商品のターゲットや想定しているお客様の課題、実際にどのような効果があるかをできる限り詳しく伺いました。そして次のお打ち合わせの際に、「ターゲット」、「顧客課題」、「ベネフィット」の3つの軸でこれから検証すべき仮説を整理し、複数のLP案を用意して、トライアルの提案を持ち込みました。

ヨクキク:そのクライアントはLPの改善活動はどれくらい行っていたのですか。

池田:先ほどお話しした通り、「一番刺さるLPは分かっている」と考えておられたので、あまり取組んではいなかったようです。そこで、まずはトライアルをしてもらおうと考えました。

ヨクキク:なるほど、トライアルの提案は採用されましたか?

池田:はい、その時点で完全に信用してもらったわけではなかったのですが、CVRの低下が深刻でしたのでひとまず取組んでみようという判断になったのかなと思います。そこからA/Bテストを通じたLP運営のDXプロジェクトが始まります。

ヨクキク:いよいよ、AIがマーケットトレンドの変わり目を捉えた話ですね。

池田:いえ、マーケットトレンドの変わり目が来る前に、すぐに効果が出始めました。まずはそのお話からご説明します。

ヨクキク:またしても失礼しました。すぐに効果が現れたのですね。

池田:はい、OptimRoboでLPの表示比率を修正しながら1ヶ月ほどA/Bテストを続けたところ、事前の企画会議で一番人気のなかったLPがCVRで1位になったのです。クライアントの中では、テストだからダメな案も入れておくか、ぐらいの気持ちで採用したLPだったので、担当の方は驚きを隠せないようでした。

ヨクキク:これまでの経験と違う結果が出たわけですね。

池田:はい。今まで経験的に一番良いと思っていたLPは4つのうち、3位でした。どのLPが「お客様に意図した通りに伝わるか」をデータとAIが証明したのです。一時はピーク時の1/4まで落ち込んでいたCVRが3/4ぐらいまで回復しました。AIの力とDXの必要性を感じていただけたのか、以前より深い相談を持ちかけていただけるようになりました。

ヨクキク:百聞は一見にしかず。成果によって、信頼を勝ち得たわけですね。

池田:その通りです。そして、OptimRoboの運用も安定し、改善活動を続けて着実にCVRが向上してきたころ、マーケットのトレンドが変わります。

ヨクキク:いよいよですね。

池田:ある日、LPの表示比率に逆転現象が起きました。今までは、最下位だったLPがいきなり表示比率1位になったのです。

ヨクキク:どのようなLPだったのですか?

池田:男女両方向けのLPでした。その商品はメインターゲットが女性だったため、男女両方をターゲットにしたLPは一応用意してある程度でこれまでもCVRは常に最下位でした。

ヨクキク:女性用の商品で、男性もターゲットにしたLPが一番多く表示される。AIが間違って判断してしまったのでしょうか。さすがのAIも完璧ではなかったと。

池田:私も最初はバグを疑いました。しかし、システムをチェックしてもバグはありません。そこで、データを抽出して手動で分析してみると、確かにそのLPにアクセスが集中しており、実際にCVRも過去のピーク時に迫る結果でした。本当に男性のお客様が増えていたのです。

ヨクキク:なぜそんなことが起きたのでしょうか?

池田:新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの人が自宅で過ごす時間が多くなりました。在宅勤務で運動不足となって体重が増えたため、ダイエットを意識する男性が増え、その商品を購入していたのです。もちろん女性のお客様も今まで通り購入されていましたが、コロナ禍の期間においては、男性の新規顧客が圧倒的に多くなりました。これは今までになかったことです。

ヨクキク:誰も予測できないような事態にも、AIは素早く対応できたのですね。データに基づくことで、未知の事態により早く対応することが可能になるということでしょうか。

池田:それは言い過ぎかもしれませんが、データを分析することで、より的確な対処ができるのは事実です。そして、AIに分析作業を代行させることでデータ分析の時間を圧倒的に短縮し、精度も上げることができるため、不確実な状況にも素早く対応できるようになるといえます。

ヨクキク:そのプロジェクトは現在どうなりましたか。

池田:DXとは業務プロセスをデジタル化し、そこから得られるデータに基づく改善活動でビジネスの成果を高めていくことだと思っています。改善活動には終わりがありません。現在もこのダイエット用補助食品のLP改善は続いており、最近では新しい仮説ができると「AIに検証させてみよう」という声がクライアントから上がるほど、データとAIを駆使する文化が根付きました。CVRは取り組み前のピークを上回る水準で推移しています。これは、クライアントのお客様が本当に求めている情報をLPという形で提供できている結果だと思います。

ヨクキク:お客様が本当に求めている情報を提供できるように日々LPを改善し、インターネット上の一枚のLPでより良い買い物体験を作って、お客様をおもてなしする。そのためにはデータとAIを使ったLP運営のDXが非常に有効だということが、よくわかりました。池田さん、本日はありがとうございました。

池田:ありがとうございました。

あとがき

CCMLABO編集部がECのおもてなしを考える特集「データとAIの力でお客様をおもてなし!「ECの心地よい顧客体験」をつくるDX推進」。3回にわたって、これからのECにおいてLP運営はどうあるべきかを様々な角度から考察してきました。

本特集がお読みいただいたみなさまにとって、データとAIを活用してお客様により心地よい顧客体験を実現されるための一助となれば幸いです。

*本記事の内容は取材時のものです。

**OptimRoboは株式会社mynet.aiが提供するソリューションです。導入のお問い合わせはCCMLABOの運営会社アイビーシステムまで。

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