【第1回】LTVを高める「攻め」のコールセンター活用術

atricle_007 ダイレクトマーケティング

通信販売事業において、LTVを高めたいと考えているマーケティング担当者の方は多いのではないでしょうか。顧客獲得にかかる費用は年々上昇しているため、1つ1つの顧客接点をより大切にする必要が出てきています。

CCM LABO運営会社のアイビーシステムもクライアント企業のLTVを高めるという課題に長年向き合ってきました。そのノウハウに基づき、今回から2回に分けて、LTVを高めるためにコールセンターをどのように活用すればよいかを特集します。

改めてLTVと向き合う

なぜLTVを高めることは事業の必須課題なのか

LTV(Life Time Value : 顧客生涯価値)を高めることは業界・業態問わず必須の課題です。特にBtoCの通信販売事業ではお客様との関係をより強固にして自社の商品を愛用してもらうための施策が非常に重要になります。

当たり前のことですが、なぜLTVを高めることが「必須」の課題なのか、と聞かれると一言で説明するのは意外と難しいものです。

  • 売上を最大化するため?
  • 利益を最大化するため?
  • 広告の費用対効果を高めるため?

これらは全て正解ですが、「必須」とまでは言えません。全て成長のためには重要な要素ですが、もっと本質的な理由があります。それは、

顧客獲得費用 < LTV でなければ事業が成立しないから

です。

新しいお客様を1人獲得する費用がLTVを上回ってしまうと、何人お客様を獲得しても収益はマイナスということとなり、事業が成立しないのです。

そして顧客獲得費用は年々上がっています。例えば、健康食品等の通信販売の場合、顧客獲得費用のKPIの一つであるCPO(Cost Per Order)は10年ほど前は5,000円程度でした。しかし、現在では8,000円〜10,000円を上回ることもあります。実に2倍に近い水準です。顧客獲得費用が2倍ということは、LTVを2倍にしなければ事業が成立しなくなってしまうということです。

お客様の課題を解決できれば、LTVは自然に上がっていく

LTVを高めるには以下のような方法があります。

  • 離脱防止
  • アップセル/クロスセル

お客様が長期的に自社の顧客であり続けてくれれば、LTVは高くなります。離脱してしまいそうなお客様を検知して離脱防止の施策を打つことで継続率が高くなり、LTVアップにつながります。

また、お客様により適した上位の商品に切り替えてもらったり(アップセル)、関連する他の商品を購入してもらったり(クロスセル)することもLTVを高める施策の一つです。

ここで重要なのは、解約を阻止するために契約期間を長期にして解約違約金を設定したり、不要な商品を押し売りしたりといった企業本位の施策はかえって逆効果だということです。クレームが発生するだけでなく、SNSで自社に対して否定的な意見が拡散したり、最悪の場合訴訟に発展したりするケースもあります。

お客様がご自身の課題を解決できることをきちんと理解すれば、商品を長く愛用し、結果としてLTVが高くなります。この自然なメカニズムを理解してお客様と向き合うことが大切です。

つまり、お客様の課題を引き出して、課題を解決できる最適な提案をすることこそ、LTVを高める近道になるのです。

コールセンターをお客様への提案の場として最大限活用する

提案の場をどのように確保するか

お客様に何かを提案したいと考えた時、「提案の場をどのように確保するか」が重要なポイントになります。お客様の課題を引き出すことができ、それに応じた提案ができる顧客接点には以下のようなものがあります。

  • 店舗
  • インターネット上の自社サイト、モール店舗
  • コールセンター

オフラインでは、店舗でお客様に対面して課題をヒアリングしながら解決策を提案するという方法があります。課題把握と解決策の提案精度が高い反面、対応できる数に限りがあるというデメリットがあります。

逆にインターネットでお客様の行動履歴から課題を想定して、解決策をレコメンドするというオンラインの方法もあります。最近ではAIを駆使したレコメンドエンジンを活用した企業も多くあります。こちらは対応数に限りはありませんが、行動履歴のデータが少ないと課題を正確に掴むことができないため、提案の精度が低い場合があります。

もう一つの選択肢として、コールセンターという提案の場があります。コールセンターであれば、店舗より多くのお客様に対応できますし、対話の中で課題をヒアリングできるため、提案の精度を上げることもできます。

申込み電話の時こそ、お客様が一番ホットな状態

お客様に何かを提案する際にもう一つの重要なポイントは、「いつ提案するか」です。先述の3つの顧客接点のうち、コールセンターの例で考えてみましょう。

コールセンターからお客様にご提案をしよう、という施策でよく聞くものとして、離脱しそうなお客様に他の商品を提案する、というものがあります。

しかし、離脱しそうなお客様は自社に対する温度(熱意)が下がっているため、提案に適したタイミングとは言えません。このタイミングで改めて課題をヒアリングして解決しようとしても、お客様は何かを押し付けられているような感覚になり、本音を語ってくれないでしょう。お客様の温度が下がっているタイミングでは、提案をするより温度を高めるフォロー電話等の施策が必要です。

では、何かを提案するのに最も適しているタイミングはいつでしょうか。それは、最もお客様の温度が高い時、すなわち申込み電話のタイミングです。申込み電話のタイミングこそ、お客様が一番ホットな状態であると言えます。

TVやラジオの広告で商品を知り、欲しいという気持ちがピークに達しているからこそ、申込みのお電話がコールセンターに届いているのです。このタイミングを逃す手はありません。

以前の記事でも申込み電話は出会いの場であり、自社のファンになってくれるか否かを分ける重要な顧客接点である、という点を解説しました。

同様に、申込み電話こそ、隠れた本当の課題を引き出して最適な提案ができるタイミングであり、お客様に商品を愛用してもらうことができるか否かを分ける重要な顧客接点といえるでしょう。

広告×コールセンターでお客様の課題を引き出して提案する方法

具体的に広告×コールセンターの連携で、申込み電話の際にお客様の課題を引き出して、提案をする方法は以下の3ステップが有効です。

STEP1.【広告】商品への興味を作る

まずは、お客様に商品を知ってもらい、興味を持ってもらわなければなりません。そのためには広告が有効です。商品のメリットや魅力的なオファーを打ち出した広告でお客様の温度を上げましょう。お客様の温度がピークに達した時、申込み電話というアクションが発生します。

STEP2.【コールセンター】改めて商品を説明し、興味をもった理由から課題を引き出す

申込み電話の際、効率を重視するならば、商品名と個数を確認してすぐに次の電話に対応することが望ましいです。しかし、ここまで説明してきたように申込み電話をただの事務手続きだととらえて効率的だけを重視して処理することは得策ではありません。

ホットな状態のお客様にこそ、丁寧に応対するべきです。そのために、まずは商品の説明を改めて行います。この工程が非常に重要で、広告の内容を誤って理解しているお客様も少なくないため、最初のタイミングで正しい理解を形成するという真摯な対応が、信頼につながります。

正しい商品理解を共有できたら、次はなぜこの商品に興味を持ったか、という理由をヒアリングします。お客様は必ず何らかの課題を解決したいと考えています。課題を解決することが目的で、商品を購入するという行為は手段です。

例えば、ダイエット用の補助商品の場合には、「痩せたい」というのが直接的な願望です。しかし、裏を返せば、「痩せられない」という現状がそこにはあるのです。痩せられない原因、つまり解決すべき課題はなんでしょうか。

食事が偏っていることでしょうか、それとも運動をしていないことでしょうか。

運動していない原因はなんでしょうか。本当はウォーキングをしたいのに、膝などの関節が痛くて歩くことが億劫になってしまったのでしょうか。等々。

このように、商品で解決したい本当の課題を引き出します。

何時間も話をすることはできないため、あらかじめ想定される課題を整理しておくことも重要です。商品の一番のメリットを中心に、お客様がどのような課題を持っていそうか、あらかじめ整理しておいてお客様の言葉の中からどの課題に該当するかを特定していきます。

STEP3.【コールセンター】課題を解決できる最適な商品と購入方法を提案する

課題の特定ができたら、最適な商品と購入方法を提案します。

先ほどの例の場合、ダイエット用の補助食品の購入を希望されていても、本当の課題は運動をしたいのに膝が痛くて運動ができない、ということであれば、関節の痛みを和らげるようなサプリメントを提案すべきです。ダイエットのために継続的に運動をする、そのためには継続的にサプリメントを飲む。課題を解決するための行動ですから、自然とお客様は商品を愛用し続けてくれるはずです。

このように、お客様の申込みを鵜呑みにしてただ事務的に商品の注文を受けるのではなく、お客様の課題を解決できる商品はどれか、どれくらいの期間、どれくらいの量をお届けするのが最適なのかを考えて積極的に提案することで、お客様との関係を強固にすることができ、結果としてLTVが高くなるのです。

まとめ

今回は、LTVを高めるためにお客様の課題を引き出して最適な提案をする方法を解説しました。広告を起点として生み出した申込み電話という最もホットなタイミングで、商品について共通の理解を作り、本当の課題をヒアリングして、最適な商品を提案する。当たり前のようで実行することはなかなか難しいものです。

なぜ実行が難しいのか。その難しさは、やはり、「人」にあります。実際にコールセンターのAG(エージェント)一人ひとりが積極的に提案するためにはどのような訓練や組織づくりが必要なのでしょうか。

次回は、CCMLABO運営会社のアイビーシステムが培ったノウハウから、どんどん提案が生まれる「攻め」のコールセンターの作り方を事例を交えて解説します。

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