ザ・カスタマーコミュニケーションマスター 大多和さん

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こんにちは。CCMLABO編集部のヨクキクです。カスタマーコミュニケーションを追求する「人」にフォーカスした特集企画「ザ・カスタマーコミュニケーションマスター」。今回はアイビーシステム札幌センターの大多和さんに、お話し伺いました。

札幌センター大多和スーパーバイザーのお仕事 品質管理の主担当

ヨクキク:本日はアイビーシステム札幌センターの大多和さんにお話を伺います。大多和さん、よろしくお願いします。

大多和:よろしくお願いします。

ヨクキク:最初に大多和さんのお仕事についてお伺いしてもよろしいでしょうか?

大多和:はい、私は、札幌センターでSV(スーパーバイザー)として、食品系の顧客の業務で業務応対品質の主担当をしています。

ヨクキク:業務応対品質の主担当、つまり品質管理をリードするお立場なのですね。品質管理をリードするというお仕事は具体的にはどのようなものなのでしょうか?

大多和:私だけでなくセンター全体で日々品質の向上の活動を行っています。そのため、応対品質を改善する活動としてどのような施策を実施しており、それらがうまく機能しているかどうか、を管理しています。また、研修資料を作成したり、自身が担当している業務ではトークスクリプトの作成・修正も行っています。

ヨクキク:全体管理の視点から、ご担当業務の実務まで幅広く対応されているわけですね、カバー範囲が広いと大変ではないですか?

大多和:そうですね、確かにいろいろな仕事をしています。ただ、センター内の仕事ももちろん大切ですが、それらに加えて顧客から指摘があったポイントについて指摘事項の検証・課題発見・打ち手を打っていくという仕事もしています。

ヨクキク:顧客からはどのような指摘を受けるのですか?

大多和:指摘内容は多岐に渡りますが、個別の指摘についてご説明するより顧客がコールセンターをどのように評価しているか、その仕組みをまずご説明したいと思います。ヨクキクさんは、「ミステリーコール」という言葉を知っていますか?

ヨクキク:行き先のわからない列車に乗って行く旅行のことですか?

大多和:それは「ミステリートレイン」ですね…(笑)。「ミステリーコール」とは、顧客のご担当者様が、消費者の立場でコールセンターに電話をかけて、その品質を評価する、というものです。

ヨクキク:なるほど、一般のお客様に応対しているつもりが、実は顧客のご担当者で応対の内容を検査されているわけですね。

大多和:はい、そうです。こちらは、どの電話が「ミステリーコール」かわからないので事前に準備することはできません。いつもやっているように応対し、その結果が評価されることになります。そうやって、顧客は仕事を依頼している複数のコールセンターを検査・評価して順位づけし、品質改善の競争を促しています。

顧客評価最下位から1位へ、努力と執念の品質改善

ヨクキク:今回のインタビューでは、大多和さんがご担当されている業務の応対品質改善事例をお伺いするわけですが、品質改善に力を入れられたきっかけは何だったんでしょうか?

大多和:品質の改善に真剣に取り組まなければいけないと感じたのは、顧客の評価で他社の品質に遅れをとってしまっていたことが分かったからです。自分たちでは丁寧に応対ができているつもりでしたが、ミステリーコールの評価結果で、競合に比べてまだ努力できる余地があることに気付きました。

ヨクキク:ミステリーコールでは、顧客が依頼先のコールセンターを順位づけしているとのことでしたが、アイビーシステムさんは何位だったんですか?

大多和:昨年度のミステリーコールの結果…

ヨクキク:(ゴクッ)

大多和:最下位でした。

ヨクキク:キビシイ!

大多和:顧客からは評価項目ごとの評価結果をフィードバックいただけるのですが、総評としていただいた評価コメントはこのような内容でした。

・丁寧な応対だが、謝辞御礼、傾聴が弱く温かみを感じづらい。

ヨクキク:丁寧な対応というところは、評価されていますが、さらに改善できる余地があったということですね。

大多和:はい。最下位という事実を真摯に受け止め、応対品質の改善を緊急の最重要テーマとして取り組みを開始しました。

ヨクキク:品質改善の具体的な打ち手としては、トークスクリプトをブラッシュアップする、といった打ち手になりますか?

大多和:いえ、まず現状把握から始めます。最初に申し上げたとおり、私の仕事の1つとして、顧客の指摘事項を検証するというタスクがあります。私たちは手抜きをしているわけではありません。それなのに、顧客からご指摘をいただくということは、「私たちが頑張っていること、注力していること」と「顧客が求めていること」の間にギャップがあるということです。まずはそのギャップを特定する必要があります。

ヨクキク:なるほど、まずは顧客の期待値を正確に把握するということですね。

大多和:実はミステリーコールには具体的な評価基準があります。評価項目は10個以上に細分化されており、その結果を顧客に教えてもらいました。結果を見ると非常に評点の高い項目もありました。しかし、顧客が重視している「謝辞御礼」や「共感/受け止め」の項目の評価が特に低かった。顧客の評価コメントの通りですね。

ヨクキク:なるほど、顧客が重視している部分の評価が特に低かったと。ではその点を考慮したトークスクリプトに修正するわけですか?

大多和:いえ、トークスクリプトというのは全体で共通です。トークスクリプトを安易に変えるとうまくできているAG(エージェント:コールセンターのオペレーターのこと)の応対品質にまで影響が出る場合があります。ちょうど、自分に合っていないフォームで投球しているピッチャーのように。そこで、顧客の評価項目に合わせてAGを再評価しました。すると、「謝辞御礼」や「共感/受け止め」の項目で合格点を下回るAGが全体の半数以上いることがわかりました。

ヨクキク:うまくできている人、うまくできている部分を大切に活かしながら、顧客の期待にも寄り添って行くように応対を改善して行くのですね。

大多和:そうです。画一的な研修やトークスクリプトの見直しが有効な場合もありますが、今回は顧客の重視する項目のスキルに応じてAGを3グループに分けて、SVが応対を聞いて対面FBするというという方法を取りました。最も改善が必要なグループにはFBを2回(1回目FB実施して一定期間経過後に、対象者全員に2回目のFBを実施)、中間のグループにはFBを1回と経過観察(1回目FB実施後、一定期間後に問題のある対応者のみに2回目のFBを実施)、うまくできているグループにはFB1回のみ実施、といった具合です。

ヨクキク:全員にFBを2回ずつ実施するわけではないのですか?

大多和: コールセンターの現場では日々多くのお問い合わせが来ます。AGの応対を止めて、SVの対面FBをすると応対できる件数が減ってしまいますが、全体として通常業務の生産性を落とすことなく育成するためには、改善すべきところに集中する必要があります。また、AGの数に対して指導するSVの数が圧倒的に少ないため、全員に均等に時間を割くことはできません。最も効果的な方法を取る必要があります。

ヨクキク:なるほど、対面FB以外にはどのような方法が効果的なのですか?

大多和:AGが改善点を自分で気付くためのセルフチェックや、上手なAGの音声を共有するといった方法があります。アイビーシステムの育成では、一方的にノウハウを教えるティーチングより、自分で改善点に気づき、具体的な目標に落とし込んで行動を改善して行くようにコーチングに重点を置いています。

ヨクキク:そうやって一人一人のやる気と実力を引き上げるとともに、組織のノウハウにしていくわけですね。

大多和:はい、そうなるように努力しています。

ヨクキク:取り組みの成果はどうだったのでしょうか?

大多和:本年度のミステリーコールの実施結果は…

ヨクキク:(ドキドキッ)

大多和:1位を取ることができました!!

ヨクキク:やったー!

大多和:顧客からの評価コメントも、今年度はこのような内容に変わりました

・丁寧で感じがいい

・きちんとした印象があり、問い合わせの御礼がしっかり伝わる

・お客様の返答に対してほとんどの担当者が共感を示すことができている

ヨクキク:そもそもポジティブな評価だった「丁寧さ」は残しつつ、特に力を入れた「謝辞御礼」・「共感/受け止め」の評価が飛躍的に上がっていますね。

大多和:はい、私たちの強みに加えて、顧客のご期待・重視しているポイントへのチューニングがうまくできたことで、高い評価をいただくことができました。

今後を見据えて

ヨクキク:最下位から1位、見事なジャンプアップです。でも1位をとってしまうと気が抜けてしまったりしないんですか?

大多和:いえいえ、もちろん1位をキープし続けなければなりません。他社さんも本年度の結果を踏まえてさらに改善を積み重ねていらっしゃると思います。一年前の私たちと同じ気概を持って取り組んでいらっしゃることを念頭に、一層努力しなければいけません。ただ、私は思うのですが、1位というのはあくまで結果で、日々の業務で高い品質の応対を実践して顧客とお客様の関係がより深まっていくこと、それによって顧客から間に立つ私たちが信頼してもらえることが一番大切なのかなと。顧客のさらなる信頼を勝ち取っていきたいと思っています。

ヨクキク:さらなるご活躍を陰ながら応援しております。大多和さん、本日はありがとうございました。

大多和:ありがとうございました。

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