【第2回】LTVを高める「攻め」のコールセンター活用術

article_009 ダイレクトマーケティング

通信販売事業において、LTVを高めたいと考えているマーケティング担当者の方は多いのではないでしょうか。顧客獲得にかかる費用は年々上昇しているため、1つ1つの顧客接点をより大切にする必要が出てきています。

CCM LABO運営会社のアイビーシステムもクライアント企業のLTVを高めるという課題に長年向き合ってきました。そのノウハウに基づき、2回に分けてLTVを高めるためにコールセンターをどのように活用すればよいかを特集します。

お客様に積極的に提案できるコールセンターは何が違うのか

提案が生まれるコールセンターとそうでないコールセンターの違い

前回の記事では、お客様に商品のことを正しく理解してもらい、お客様が抱えている課題きちんと引き出して最適な提案をすることの重要性を解説しました。

では、お客様の課題をヒアリングして、解決策を提案できるコールセンターとそうでないコールセンターの違いはどこにあるのでしょうか。
それは、知識とマインドにあります。

お客様に提案するためには、まず、圧倒的な商品知識が必要です。商品の概要や価格といった表面的な情報だけでなく、この商品はどのような人の、どんな課題を解決するために作られたのかという商品が生まれた背景、どのような原料・素材・成分を使っているか、どのような場合には特に効果があるか、その反対にどのような場合にはあまり効果がないのか、といった詳細な商品知識を正確に理解しておく必要があります。

また、商品に関する背景知識も重要です。例えばダイエットを補助するサプリメントの場合、健康的なダイエットには何が必要か、どのような生活習慣が影響するのか等、解決しなければならないお客様の課題についても理解しておく必要があります。

AG一人ひとりの知識量が多いことが、お客様に提案できるコールセンターの必要条件になります。

しかし、知識量が多いだけでは、提案は生まれません。提案をするためにはAGが自然と提案をしたくなるようなマインドセットが必要になります。

提案したくなるマインドセット

提案が重要だからといって、提案を義務化してAGに強制すると、「押し売り」が横行します。そして、商品の押し売りは多くの場合、深刻なクレームにつながります。

AGが積極的に提案するには、自分が担当する商品について、自信を持ってお勧めしたいという強い気持ちを持つことが必要です。AG自身がその商品の必要性を納得しており、お客様の課題解決に有効だと信じることができるからこそ、数分のお客様との会話の中で、より良く商品を使ってもらうための提案をしようと思えるのです。

積極的に提案できるコールセンターは圧倒的な商品知識とお客様の課題解決のために商品をお勧めしたいというマインドセットの両方が基本行動として定着している場合がほとんどです。

商品知識は資料を整理し、研修を繰り返すことで習熟していくことが可能です。

しかし、提案したいという気持ちはどのように醸成すれば良いのでしょうか。精神論だけではうまくいきません。AG一人ひとりがマインドをセットするには工夫が必要で、そこには方法論が存在します。

マインドセットの方法論

ゴールデンサークル理論とは

みなさんは、ゴールデンサークルという理論をご存知でしょうか。2009年にサイモン・シネックという人が発表した考え方で、プレゼンやCMなど人に何かを伝える方法についてのフレームワークです。

ゴールデンサークル理論は以下のような考え方です。

まず、サイモン氏はコミュニケーションで伝える内容を3つに分類しました。

「WHY」 ・・・なぜそうするのか(信念、目的、何のためするのか)

「HOW」・・・どうやるのか(商品やサービスの説明、方法、理論)

「WHAT」・・・何をするのか(商品、サービス)

https://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action

そして、以下のように考えました。

人は、WHAT(何を)ではなく、WHY(なぜ)に心を動かさせる

https://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action

図示すると下図の通りです。

内側の円、つまりWHYから始めることで人の心を動かすことができると考えました。

具体的な例を見てみましょう。まずは、一般的なプレゼンテーションの例です。

  1. 私たちは素晴らしいコンピューターを作りました。(WHAT)
  2. 美しいデザインの、操作が簡単で親しみやすい商品です。(HOW)
  3. 買いませんか?

自分たちが何をしていて、それがどのように優れているかを説明して、相手に行動を期待します。つまり、WHAT→HOWの順に説明しているのです。
多くの企業はこのように自分たちの商品を宣伝しますが、これでは私たちの心は動かされません。

では、反対にWHYから始める、ストーリーのあるプレゼンテーションの例を見てみましょう。

サイモン氏はゴールデンサークルの理想的な例としてApple社を上げています。Apple社は有名になる前から以下のようなプレゼンテーションを展開していました。

  1. 私たちのすることはすべて、世界を変えるという信念で行っています。(人々が普通だと考えることと)違う考え方に価値があると信じています。(WHY)
  2. 私たちが世界を変える手段は 美しくデザインされ 簡単に使えて 親しみやすい製品です。(HOW)
  3. こうして素晴らしいコンピュータができあがりました。(WHAT)
  4. 一つ欲しくなりませんか?

ゴールデンサークル理論が示す通り、私たちが何かを欲しいと思う時は、多くの場合、心を動かすストーリーがあるのではないでしょうか。

AGが納得しているからこそ、お客様を動かすことができる

ゴールデンサークル理論はコミュニケーションによって人の心を動かすための理論です。当然コールセンターとお客様のコミュニケーションにも適用できます。

そして、ここが重要なのですが、お客様にWHYを伝えるためには、AGがWHYについて納得している必要があります。これが、コールセンターにおけるマインドセットの最も重要なポイントです。

商品知識を覚えることで、WHATやHOWは訴求できるようになります。加えて、AG一人ひとりが自分が担当する商品についてなぜこの商品を提案すべきなのか、WHYに当たる部分をしっかり納得することで、この商品を是非お客様にお勧めしたいという気持ちが生まれ、提案したいというマインドがセットされた状態になるのです。

AGがお客様に商品を提案する時、商品名や優れている点を羅列するのではなく、なぜこの商品は生まれたのか、お客様のどのような課題を解決したいのか(WHY)、どのようなこだわりを持って商品を作ったのか(HOW)、だからこの商品をお客様にお勧めしたい(WHAT)、という伝え方をすることで、お客様の心を動かすことができます。

成功事例

特集の締め括りとして、アイビーシステムで実際にあった、積極的に提案できるコールセンター作りの成功事例をご紹介します。

ある業務でクライアント様から、「LTVが徐々に低下しているため、必要性のあるお客様にきちんと定期購入をしてもらいたい」という依頼を受け、定期購入率を向上させるプロジェクトが始まりました。

この事例で着手した改善ポイントは3つありました。

最初に実施したのは、AGの商品知識の強化でした。商品の良さをより正確に伝えるため、商品のアピールポイントとその根拠を再整理してコールスクリプトやサポート資料に反映しました。

商品知識の強化の次に着手したのが、提案力の強化でした。それまでは商品の強みお客様にアピールすることで定期購入を勧めていましたが、さらに踏み込んで、お客様の課題をヒアリングし、課題を解決する方法として商品を勧めるようにお電話の流れを抜本的に見直しました。

そして最後に、AGのマインドセットに取り組みました。ゴールデンサークルの考え方を適用して、AG全員になぜこの商品が必要なのか、お客様のどんな課題を解決するものなのかを改めて納得させるための研修を実施しました。研修の中では、提案の方法を知識として覚えるだけでなく、自分の実生活の中で、心動かされた提案を受けた事例を相互に発表するなど、お客様になぜ(WHY)から伝える重要性を感じてもらうことで、自然に提案したくなるマインドセットを行ったのです。

結果として、定期購入率をプロジェクト前に比べて1.6倍まで引き上げることができました。もちろんお客様に寄り添って課題をヒアリングし、解決策を提案した結果ですから、クレームが増えるようなこともありませんでした。

まとめ

LTVはお客様と自社のつながりの深さを示しています。LTVの向上、つまりお客様と継続的で深い関係を築くには、小手先のテクニックだけではなく、お客様の課題解決に真摯に向き合うことが重要だといえます。そして、積極的に提案できるコールセンターはお客様に寄り添うために最も有効なチャネルの一つになり得る可能性を持っているのです。

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