CCM LABO編集部が、「これからのECにおいてLPはどうあるべきか」をLPの本質的な役割から紐解き、データやAIを活用してLP運営を進化させる方法や事例を特集する「データとAIの力でお客様をおもてなし!「ECの心地よい顧客体験」をつくるDX推進」。
第2回となる今回は、データとAIを使って自社LP運営のDXを推進する具体的な実践方法を解説します。
〜編集部より〜
今回の記事は、AI・データ分析でWEBサイトを改善するソリューション「OptimRobo」を手掛ける株式会社mynet.aiの全面的な協力の下、執筆しました。
Data is Kingの時代がやってきた
前回はLPでお客様をおもてなしするために、データに基づく「正しいA/Bテスト」をしましょうという話をしました。ECでの接客ではお客様の反応が見えないので、代わりにデータを収集して、お客様が求めるLPになるように改善を続けることが重要だ、という話でした。
本題に入る前に、そもそもなぜデータを活用する必要があるのか、について触れたいと思います。
データを活用することが必要である理由、それは、ビジネスにおいてデータの取り扱い方・付き合い方で成果に差が生まれる時代がやってきたからです。
例えば、NETFLIXはサブスクリプションの動画サービスが当たり前の存在になる前からデータに着目し、ユーザー毎に視聴履歴に基づくレコメンドを実施していました。結果として快適なユーザー体験が生まれ、現在のような地位を築くことができたといわれています。
市場で存在感を発揮している企業は必ずと言っていいほど、データを活用しています。言い換えれば、現在のビジネス環境では、データなくして競争優位を作り出すことはきわめて困難であるといえます。
もはや業務プロセスからデータを取得し、データを活用して業務改善を実施すること、すなわちDX(デジタルトランスフォーメーション、以下DX)は企業必須の経営課題なのです。
まさにData is Kingの時代がやってきた、といえるでしょう。
自社LP運営のDXを推進する方法
もちろん、本特集のテーマであるECのLP運営においてもDXは必要不可欠です。そして、LP運営における最も重要なDXは、前回記事で説明したデータに基づく「正しいA/Bテスト」を実施することだと筆者は考えます。
では、「正しいA/Bテスト」はどのように実施すれば良いのでしょうか。
違いをわかりやすくするために、よくあるA/BテストのPDCAサイクルと「正しいA/Bテスト」のPDCAサイクルを比較しながら見ていきましょう。
よくあるA/BテストのPDCAサイクル
Plan:過去の成功事例、他社事例でプランニング
A/Bテストで使用するLP案を、過去にCVR(コンバージョンレート、以下CVR)が高かった自社LPや他者事例に基づいて作成します。
問題点:事例だけを参考にすると、一つ一つの案がどのような狙いを持っているのか不明確になり、A/Bテストで何を検証したいのかも不明確になることがあります。
Do:A/Bテストの実行
作成したLP案のうち、いくつかの良さそうな案を採用してA/Bテストを実行します。
問題点:狙いが不明確な場合、要因がわからないまま、その時CVRが高いLP案を使用するだけになります。
Check:CVRの目標と実績を比較
キャンペーン終了後、CVRの目標と実績を比較して、結果に対して分析を行います。
問題点:結果だけでは、達成(未達)の要因がLPに起因するものなのか、商品によるものなのか、キャンペーン内容によるものなのか、外部環境によるものなのかを切り分けることが難しい場合が多くあります。
Action:結果が良い場合は継続、悪い場合は新しい施策を実施
次のキャンペーンでは、目標達成など良い結果が出ればLP案を継続し、目標未達の場合には、広告会社からの提案や新しい他者事例に基づいて新しい施策を実施します。
問題点:継続/方針転換に明確な理由がない場合があります。
上記のようなPDCAサイクルの場合、結果が出なかったとき、新しい施策に切り替えるしかなくなり、改善が手詰まりになります。
データに基づく「正しいA/Bテスト」のPDCA
Plan:仮説に基づき、狙いを明確にしたLP案を作成
自社商品の「ターゲット」・「顧客課題」・「ベネフィット」の仮説を立案し、それぞれの仮説をクリエイティブに落とし込んで狙いを明確にしたLP案を作成します。
【具体例】スキンケア化粧品(シミ対策)の場合
(資料協力:株式会社mynet.ai OptimRobo*)
Do:アクセス数とCVRを毎日確認して表示比率修正を繰り返す
アクセス数とCVRを毎日確認し、計画時に立案した仮説を確かめるためのデータを収集・分析しながら、LP案の表示比率を修正してCVRを高めていきます。
Check:仮説を検証する
CVRの目標と実績を単に比較するだけでなく、計画時に立案した「ターゲット」・「顧客課題」・「ベネフィット」の仮説のうち、正しかった部分を明確にします。間違っていた部分については、仮説を修正します。
Action:新しい仮説をクリエイティブに落とし込む
次のキャンペーンでは、修正した仮説をクリエイティブに落とし込みます。そうすることで、継続する部分と改善する部分の理由が明確になります。
たとえ一つの施策で最終的な結果が改善しなくても、業務プロセスからデータを取得し、データを基に要素分解して着実に改善ができるため、確実に前に進むことができます。
このように、データに基づく「正しいA/Bテスト」を実施することで、自社LP運営のDXを推進することができるのです。
AIを使ってPDCAサイクルを高速化する
AIについて考える
ここまでの説明では大切なキーワードであるAIに触れていません。それはいきなりAIの効用について説明する前に、AIが何者なのかを立ち止まって考える必要があるからです。
最近ではAIという単語を見ない日がないほど、AIという言葉自体がバズワードになっています。
では、AIとは何者なのでしょうか。
いろいろな考え方がありますが、この記事ではAIを以下のように定義したいと思います。
統計やデータ分析などの技術を使って、人間の知的作業の一部を代行させるもの
つまり、AIとは人間ができないことをやってくれる「なんかすごいもの」ではなく、人間が(時間をかけて)考えればできることを代行してくれるものに他ならないのです。人間にもどうしていいかわからない仕事でAIが勝手に成果を上げてくれるということはない、ともいえます。
AIに任せるべき作業
先ほど説明したデータに基づく「正しいA/Bテスト」を全て人力で実施すると、膨大な工数がかかります。しかし、先ほどの通り一部の知的作業はAIに代行させることが可能です。
では、どのような作業はAIに任せるべきなのでしょうか。
筆者が考えるAIに任せるべき作業は大きく分けて2つあります。
- AIに任せるべき作業1:AIにやらせた方が速い作業
- AIに任せるべき作業2:AIにやらせた方が精度が上がる作業
それぞれ具体的に見ていきましょう。
AIにやらせた方が速い作業
「正しいA/B」テストのプロセスの中でも多くの工数がかかるのは、テスト期間中に毎日結果を確認し、LPの表示割合を変えることです。
LP案ごとにアクセス数とCV数を集計してCVRを計算し、どの案が優れているかをチェックした上で、CVRが高いLPの表示割合を増やしたり、反対にCVRが低いLPの表示割合を減らしたりするには多くの手間と時間がかかります。
また、ミスのできない、しかも同じ工程の作業を毎日毎日繰り返すことになるため、担当者は大きなストレスと抱えることとなります。
このように同じ作業を速く正確に繰り返すことはAIの得意分野であるといえます。
AIにやらせた方が精度が上がる作業
単純作業の他に、もう一つAIにやらせた方が良い作業があります。そしてこれこそが、人間の知的作業を代行する、という意味で、AIの真価が発揮される作業です。
その作業とは、日々集計したLP案それぞれのCVR実績が偶然なのか、必然なのかを判断することです。もう少し厳密にいうと、偶然なのか、必然なのかを判断すること、もしくは判断しないこと、です。
特にA/Bテストの序盤では、アクセス数=データ量が十分ではなく、CVRもたまたま高かったり、低かったりします。集計したCVR実績が偶然なのか、必然なのかを判断することは人間でも難しい作業です。
そこで、AIは統計やデータ分析の技術を使って、仮説が正しかったために必然的にCVRが高くなったのか、それともまだその判断ができない状態なのか、を判定します。
そして、単純に今日のCVRが高いLPの表示割合を増やすのではなく、まだ良いか悪いか判断できない、つまりもっとテストをすることが必要なLP案があれば、判断ができる十分なデータが集まるまで一定割合で表示するようにします。
こうすることで、A/Bテストによって確実に仮説を検証でき、LPを着実に改善することができるのです。
【具体例】スキンケア化粧品(シミ対策)の場合
(資料協力: 株式会社mynet.ai OptimRobo*)
LP運営のDX推進において、AIは放っておけば勝手に成果を上げてくれる魔法の箱ではなく、データに基づく「正しいA/Bテスト」のPDCAサイクルを実践するマーケターの作業負荷を圧倒的に軽減し、かつ精度を飛躍的に高めてくれるツールだといえます。
まとめ
ECのおもてなしを考える特集「データとAIの力でお客様をおもてなし!「ECの心地よい顧客体験」をつくるDX推進」。
第2回となる今回は、なぜデータ活用が必要なのか、LP運営のDX推進のためにデータに基づく「正しいA/Bテスト」のPDCAサイクルを回す方法、そして、マーケターの手間を削減し、精度を高めるために、AIをどのように使えばよいかを解説しました。
次回は最前線で実際にLP運営のDXに取り組んでいる株式会社mynet.aiの池田さんにその難しさや成功事例を伺います。
*OptimRoboは株式会社mynet.aiが提供するソリューションです。導入のお問い合わせはCCM LABOの運営会社アイビーシステムまで。