【第1回】 ECのおもてなしを考える – LPの本当の役割とは?

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ECのおもてなしを考える - LPの本当の役割とは?

インターネットで通信販売事業を展開する場合、必須となるのがLP(=ランディングページ)です。LP制作のHow toはかなり研究されており、お客様の購買を促進するページの作り方は広く普及しています。ECサイトを運営されている企業の担当者の方々は日々お客様のアクションを研究し、効率的なLPを追求しています。

しかし、現在、ECの世界は非常に激しい競争に晒されています。LPのデザインだけで差別化することは年々難しくなっているのが現実です。

そこでCCM LABOで、「これからのECにおいてLPはどうあるべきか」をLPの本質的な役割から紐解き、お客様の心地よい買い物体験を実現できるようにLP運営を進化させる手段として、データやAIを活用する方法や事例を3回に分けて特集します。

特集名はずばり、「データとAIの力でお客様をおもてなし!「ECの心地よい顧客体験」をつくるDX推進」。第1回の今回は改めてLPとは何かを考えてみたいと思います。

いまさら聞けない「LPとは?」

LPはLanding Pageの略で文字通り自社サイトの中で一番最初にアクセスされたページのことです。インターネットを回遊していたユーザーが自社のサイトに「着地」した場所であることからLanding Pageと呼ばれます。

ユーザーのアクセス経路

インターネットで自社サイトにユーザーがアクセスする経路は大きく分けて3つあります。

検索結果からのアクセス(オーガニック検索)

1つ目は検索エンジンでキーワードを入力し、表示された結果(最上位に表示される広告を除く)をクリックしてサイトにアクセスする経路です。ユーザーは明確に目的を持って検索をしている場合が多く、目的を持ってアクセスしているという特徴です。

広告からのアクセス

2つ目は広告からのアクセスです。検索結果の最上位に表示されるリスティング広告や、他のサイトの広告枠に表示されたディスプレイ広告、SNS上の広告等をクリックしてアクセスする経路です。ユーザーは広告によって潜在的なニーズを喚起され、特定の情報に興味を持ってアクセスしているという特徴があります。

関連サイトやSNS(広告以外)からのアクセス

3つ目は他のサイトを見ていたり、SNSを見ているときに参照されている自社サイトに興味を持ち、リンクをクリックしてアクセスする経路です。ユーザーが特定の情報に興味を持ってアクセスしているという点では、広告からのアクセスと似ていますが、流入元サイトでどのように扱われているかによって、ポジティブな動機かネガティブな動機かが異なるという特徴があります。

いずれの場合にも、ユーザーは特定の情報を得ようとして自社サイトを訪れます。

必ずしもTopページがLPになるわけではない

ユーザーが特定の情報を得ようとしているということは、必ずしもTopページがLPになるわけではないということです。以下の図のように、検索結果にはTopページ以外にアクセスできるリンクも併せて表示されます。

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目的を達成できるページに直接アクセスする方がユーザーとっては手間が少なく心地よい体験になります。

実際にCCM LABOの運営会社アイビーシステムのホームページでは、6割以上のアクセスがTopページ以外へのアクセスです。

ユーザーにアクションを促すことに特化したページに直接誘導する

ECサイトの場合、ユーザーに商品を紹介し、その場で購入できるようなページを用意することが一般的です。

先述のようにユーザーは何らかの情報を得たいと考えてページにアクセスしているわけですから、アクセスしたページだけで、目的が達成できるのであれば、それが最も理想的です。

そこで、ユーザーが必要な情報を閲覧し、必要性を感じればその場で購入できるページに直接アクセスしてもらうことがユーザーにとって(もちろんECサイトを運営する側にとっても)もっと効率的であると言えます。

したがって、ECにおいては「商品を紹介し、その場で購入できるページ」にアクセスする経路を特に強化し、ユーザーが最初にそのページにアクセスするように設計することから、「商品を紹介し、その場で購入できるページ」をLPと呼ぶことが多いのです。

ここまでのまとめ

ECでは、「商品を紹介し、その場で購入できるページ」をLPと呼ぶ

LPの本当の役割

LPの本当の役割は「おもてなし」

ここまでにLPとは何かを改めて確認しました。ここでもう一歩踏み込んで、LPの本当の役割を考えてみたいと思います。

ECにおいて、LPとは「商品を紹介し、その場で購入できるページ」を指します。言い換えれば、LPは接客をする場であると言えます。接客において重要なのは、お客様に対して、心地よくお買い物をしてもらえるように、必要な情報を提供して買い物という体験をエスコートすること、つまり「おもてなし」です。

LPの本当の役割はお客様を「おもてなし」することであり、顧客が求める「おもてなし」ができれば、購入という結果が返ってくるのです。

LP上でどのように「おもてなし」するか

LPは接客という行為を1枚のWebページ上に再現したものに他なりません。対面の接客を比較してみると、LPがどうあるべきかわかりやすくなります。

対面の接客における「おもてなし」

対面の接客における「おもてなし」は以下のようなプロセスで行われます。

まずお客様にヒアリングをします。どの商品に興味を持ったのか、なぜ興味を持ったのか、どのような商品だったら購入したいと思っているのか、お客様がお持ちの課題に真摯に耳を傾け、課題を共有します。

次に、商品の説明をします。その商品の特徴、どのようなことができるか、反対にどのようなことはできないかを説明します。また、実際に使った方の感想や類似の商品との差別化ポイントがあれば説明します。

最後に購入の意思を確認します。

以上のようなコミュニケーションを販売する側が押し付けることなく、お客様に合わせて行うことが対面の接客において心地よい買い物体験を実現する「おもてなし」です。

「おもてなし」をLPに上に再現する。

では、対面の接客をどのようにLPに再現すればいいのでしょうか。いろいろな方法論が確立されていますが、以下のようにLPを構成してお客様をエスコートすることが一般的です。

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このようにもしお客様が目の前にいるとしたら、どのように接客するかを意識して、LPを制作することが重要です。

ここまでのまとめ

お客様に適切なLPが表示されることがECにおける「おもてなし」の一つの形

LPは改善活動が命

対面の接客を再現する形でLPを制作したとして、大きな問題が残っています。それは、Webページはお客様によって変えることができない*ということです。

ですから、1枚のLPでより多くのお客様に適切な情報を提供できるように、お客様のLP上の行動を研究して、何度も何度もLPを改善する必要があります。一回きりの改善ではなく、「改善活動」を日々継続することが重要です。

改善活動を行うために最も重要なのはデータです。対面の接客であれば、お客様の反応はその場でわかります。しかし、ECの場合、お客様がLPを閲覧している様子はわかりません。LPのどこが分かりにくかったのか、どこで興味を失ってしまったのか、といった情報はデータとして収集し、データに基づいて改善活動を進めるしかないのです。

具体的には、複数のLPを制作してA/Bテストを実施し、どちらがお客様に喜ばれるかを測定することが有効です。A/Bテストを通じて、どのようなLPだとお客様は離脱してしまうのか、お客様が興味を失わず長時間滞在してくれるのはどのようなLPなのかを研究し、問題点を改善していきます。

A/Bテスト自体は新しい手法ではありません。従来から取り組んでいる企業も多く、A/Bテストツールもいくつも存在します。しかし、A/Bテストを正しく運用してLPを「着実に」改善できている企業は意外と少ないのではないでしょうか。

「AとBだとBの方がよかったね。Bを表示しておこう。」というだけでは、せっかくA/Bテストにかけた工数が無駄になることが多いのです。反対に、A/Bテストをするたびに必ずLPの改善点が明らかになっているのであれば、A/Bテストを正しく運用できている可能性が高いです。

両者は何が違うのか。それはデータの使い方です。対面での接客がそうであるように、商品を買った/買わなかった、という「結果」以外にも様々な情報を改善活動のタネにしなければなりません。LPではお客様の反応をデータとして取得する必要があるため、仮説⇒データ分析⇒仮説の立証を繰り返して改善案に繋げる必要があります。仮説がないとデータを集めることさえできないのです。

このように仮説に基づきデータを集めて分析し、仮説を立証してさらなる改善につなげる、いわば「正しいA/Bテスト」を全て人力で実施するには、非常に多くの時間とコストがかかります。AとBどちらが良いLPかを判断することは簡単ではありませんし、改善点がわからなければ、A/Bテスト自体に意味がないのです。

では、正しいA/Bテストを実施することは時間と資金に余裕がある一部の大企業にしかできないのかというと、そんなことはありません。正確にいうと、従来はその傾向が強くありましたが、技術の進化によって状況が変わりました。つまり、人間の作業をAIに代行させることができるようになったことで、時間とコストを大幅に削減することができるようになったのです。データとAIをうまく活用することで、正しいA/Bテストを実施する敷居はとても低くなりました。

AIを活用するとどのような仕組みでLPのA/Bテストを効率化できるのでしょうか。そもそもAIは何をしてくれて、どのように使うべきなのでしょうか。

それは第2回に譲りたいと思います。

次回はA/BテストにデータとAIを活用するというところからさらに掘り下げて、ECのおもてなしを実現するためにLP運営のDXを推進する方法を解説します。

*最近はWebページの出し分けができるツールもありますが、すべての会社が導入しているわけではありません。

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