リコール対応の7つの手順。 製品の欠陥発覚からリコール準備・実施・終了までに必要な7つの手順を解説

リコール対応 特集

事業者のリコール対応の遅れは、消費者の被害の拡大や、企業の信頼を失墜させる要因になります。

リコール事案が発生した事業者には、リコール要否の判断や消費者への告知方法、関係者への協力要請などリコール対応手順に則した迅速かつ適切な対応が求められます。

そのため、リコール対応が必要な製品を扱う事業者は、普段からリコール時に適切な対応ができるにように体制を整えておくことが大切ですが、「自分の会社の製品に欠陥が見つかった時、何をどのように対応したら良いかわからない」という担当者もいるのではないでしょうか。

今回の記事では、経済産業省が定めるリコールハンドブックをもとに、リコール対応の基本的な流れとポイントをわかりやすく整理して説明します。

リコール事案発生時に対応することなる企業の顧客対応担当者はぜひ参考にしてみてください。

[出典]消費生活用製品のリコールハンドブック2022
https://www.meti.go.jp/product_safety/recall/recall_handbook2022.pdf

リコールの定義

リコールとは、製品に欠陥が見つかった場合に、製造業者や販売業者が無償で修理・交換・返金などを行うことです。この措置は、製品の安全性に関わる問題が発生した場合や、消費者の安全を確保するために行われます。リコールは、法令に基づくものと、製造業者などの判断による自主的なもの(自主回収)に分けられます。

製品の欠陥

リコールは、製品の設計、製造、加工、組立などに起因する欠陥が原因で発生します。車や家電製品の製造工程での欠陥によるリコールの案内をよく目にしますが、食品のアレルギー表示の間違いが原因でリコールが発生することも多くあります。

無償での対応

リコール対象の製品は、無償で修理、交換、返金などの措置が取られます。

安全性の確保

リコールは、製品の欠陥によって消費者の生命や身体に危害が及ぶ可能性を低減し、安全性を確保することを目的としています。

家電製品で耐熱加工の不備により発火の恐れがある場合や、車やバイクなどの部品の劣化により事故が起きる可能性がある場合、食品では製造工程での異物混入や衛生管理不備によるカビの発生の可能性がある場合などが例としてあげられます。

法令に基づくもの(=リコール)と、自主的なもの(=自主回収)

法令に基づくもの、または重大な製品事故につながる可能性のある欠陥に対する措置を、「リコール」と呼びます。

「自主回収」とは、法令に基づくものではなく、製造業者などが自主的に行う回収措置のことで、リコールほど深刻な欠陥ではない場合や、製品の品質を向上させるための措置として行われます。

ただし、自主回収といえども不適切な対応をすれば企業イメージの失墜に繋がるため、慎重な対応が必要です。

※本記事では、自主回収を含めた製品の欠陥に対する回収措置を「リコール」として説明します。

リコール対応の手順

事業者は、製品の欠陥が発見されると、事実関係の把握、リコール実施の要否判断を経て、リコールの準備・実施・終了までのアクションをとることで、リコール対応を完了します。

ここから、リコール対応の検討から対応終了までに必要な7つの手順と注意点を解説します。

① 事実関係の把握

リコール実施の判断を行う前提として、事実関係の正確な把握や原因究明が求められます。また、製品事故に関する行政等への報告が求められます。

・事実関係の正確な把握や原因究明
製品の欠陥の報告を受けた段階で、製品の特定(ロット、販売経路、流通販売数量 等)をします。また、製品・サービスの問題点を迅速に調査して原因(設計起因、製造起因、仕様上の情報提供の不備 等)の特定と、同一事象が他にも発生していないか確認、必要に応じて対象製品の出荷停止や販売停止を行うなどの初動対応を実施します。

・製品事故の内容の整理と行政への報告
収集した情報から製品事故の内容の整理が必要です。法律に基づく事故内容の報告が必要なものの場合は国(消費者庁)への報告が必要ですし、製品事故情報収集制度等に基づく関係行政機関等への報告が必要な場合もあります。

② リコール実施要否の判断

製品事故等により被害が発生している場合、被害者への対応は最優先事項の一つです。
直ちにリコールを実施するか、ひとまず暫定対応を実施するか、被害者に対する道義的責任の範囲は、法的責任の有無や製品事故の程度を勘案して判断します。
リコールを実施しない判断をしたとしても、マーケット情報のモニタリングや状況変化でリコール実施の再検討が必要です。

・経営者による意思決定
リコールを実施すべきかどうかの判断は、企業や行政が製品の不具合や問題が「人の生命・身体・財産に危害を及ぼす可能性があるか」を中心に評価して決定されます。

・意思決定の判断要素
リコール実施の意思決定は、「被害の質/重大性」、「事故(被害)の性格」、「事故原因と関係」の要素を検討し判断します。

 ✓被害の質/重大性:
   人への被害(人への被害の可能性)の有無、物損が軽微か重大か
 ✓事故(被害)の性格:
   単品不良に留まるか、多発/拡大の可能性があるか
 ✓事故原因との関係:
   製品の欠陥か、修理/設置工事ミスか、経年劣化か、消費者の誤使用/改造による事故か

③ 対策本部の設置

リコール実施が決まったら、実施母体(対策本部)を設置します。

・対策本部の構成と役割
リコールは全社的な取組ですので、実施母体が責任をもって対応することが求められます。
構成は、社内の法務、品質保証、広報、営業など関係部署を集めた対策本部を編成し、社内外への情報共有の窓口を一本化します。
役割は、経営責任者がすべてを統括しながら、リコールプランの策定、リコールの実施、リコールの実施状況のモニタリングを実施します。

④ リコールプランの策定

対策本部は、まず初めにリコールプランを策定します。

(1)リコール方法の検討
リコール方法は、以下a~cのそれぞれの実施検討を行います。
 a)製造、流通、販売の停止や流通段階からの製品回収
 b)消費者への適切な情報提供(リスクに関する情報提供/使用上の注意等の注意喚起)
 c)消費者からの製品交換、修理、引き取り方法

(2)リコール対象数・対象者の特定
基本的にはリコール製品の全出荷量をリコール対象数として設定します。
また、市場に流通している対象製品については、販売事業者と協力を得て可能な限り追跡確認して所有者を特定します。

(3)目標設定と評価基準の検討
それぞれのリコール対応策の開始時期、対応期間を定めて、リコール対応の具体的な実施率(回収確認された割合)の目標や評価基準を定めます。

(4)販売・流通事業者への情報提供/協力依頼
店頭での販売停止や流通段階の製品回収のためには、販売事業者や流通事業者の理解と協力が必要です。販売・流通事業者への迅速な情報提供とリコールへの協力依頼を実施します。

(5)リコール実施における経営資源の検討(内製で対応するか/アウトソースを利用するか)
決定したそれぞれの実施方法につき、必要な人的資源、物的資源、金銭的資源、情報資源を見積もります。
内製で対応するのか、アウトソーシングによって実施するのかの判断も重要です。

⑤ 社告等の情報提供方法の選択

リコールプランの策定とともに社告(※)等の情報提供方法を決めます。
※社告とは、企業が新聞などのメディアを通じて、商品リコールや株主への案内、経営者の訃報など、特定の関係者に向けて発表する告知のこと

新聞広告、Webサイト、SNS、取扱店での掲示(店頭チラシ、POP)など、複数チャネルで対象製品と対応内容を明示し、分かりやすい言葉で、回収・交換・修理方法を案内します。

消費者が行動しやすいよう、フリーダイヤルやWebフォームでの受付体制を整え、特定されている購入者に対しては電子メールや電話、ダイレクトメールで連絡を行います。

⑥ 関係機関等への連絡と協力要請

リコールプランが整って、情報提供方法が決まったら、関係者・メディア・関係機関への連絡と協力要請を実施します。

・関係者・メディア
従業員/販売事業者や流通事業者を含む取引先/業界団体/ユーザー団体/保険会社/マスコミ

・関係機関
消費者庁や所管官庁(例:自動車なら国交省、電気製品なら経産省)へリコール報告。
製品によっては、報告義務が法令で定められているもがあります(例:消費生活用製品安全法、道路運送車両法など)。

消費者からの訴訟リスクやSNSなどでの炎上が想定される場合には、法律事務所や危機管理コンサルタントの支援が必要になりますので、法律家や危機管理コンサル等への連絡と連携も必要です。

⑦ リコール実施状況のモニタリング(継続的監視・評価)

リコール計画が整い情報共有が完了したら、速やかにリコールを開始し、製品の回収修理を実行します。

リコール対応は、単に製品の回収・修理の対応実施だけでなく、リコール状況の記録・管理による再発防止への仕組み作りへの取組みも必要となります。

対策本部は、リコール対応開始後もリコールデータの分析などで実施状況を監視・有効性を評価し、再発防止策のための措置を講じて、関係機関へのリコール途中経過の報告を経て、消費者の手元の製品が全て把握され回収率が100%になれば「リコール終了」となります。

まとめ

どれだけ万全の体制を整えても製品事故は完全には防げません。

そのため、事業者は「事故は起こり得る」という前提でリコールへの備えが必要です。

事業者には安全な製品を提供する責務がありますが、もし自社商品に事故や欠陥の兆候があった時に、迅速かつ的確な適切なリコール対応を行うことができれば、消費者との関係強化にもつながります。

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