コールセンターにおける高齢者雇用の必要性
近年、日本社会の少子高齢化は一層進展し、総務省の統計によれば、現在、65歳以上の人口はすでに全体の3割近くを占めています。
少子高齢化による労働力人口の減少は、あらゆる業種の企業経営に影響しはじめていて、いまや企業にとって労働力確保のための高齢者活用は避けて通れないテーマとなっています。
特に採用難や離職率の高さが常態化しているコールセンター業界への影響は深刻ですが、現在、コールセンターの高齢者雇用の考え方に大きな変化が起きています。
これまでのコールセンターは、高齢者雇用を単に「人材不足の課題を解決する労働力の補完」と考えていましたが、「顧客接点の質を高める戦略的手段」と位置づけた積極的な高齢者の採用活動が増えてきていて、現在のコールセンター業界の高齢者雇用は、人材確保の戦略的観点でこれまでと違った大きな意味を持ちつつあります。
本記事では、コールセンター業界の高齢者雇用について、高齢者従業員の特徴、雇用の際の注意点を解説。高齢者雇用の成功時例もご紹介します。
高齢者従業員の特徴
高齢者従業員には、若年層とは異なる特性が存在しますが、それは必ずしも弱点ではなく、コールセンター業務において強みとして活かせる側面も多いと言えます。
電話注文や電話問合せなどでコールセンターを利用するお客様は高齢者が多く、若年層のオペレーターの応対では、顧客満足度の観点で十分な対応に至らないこともあります。
案内する商品やサービスを利用する高齢顧客層からの電話注文や電話問合せを、顧客と同じ価値観や生活経験を持った高齢のスタッフが接客応対することは、顧客満足度の向上につながり、特に金融、保険、医療関連など、生活経験や安心感が重視される領域では、高齢者従業員の果たす役割が大きくなっています。
豊富な人生経験と落ち着き
長年の社会生活を通じて培った経験や判断力は、顧客対応において冷静さを発揮します。特にクレーム対応など感情的な場面において、高齢者の落ち着いたトーンや共感力が顧客の安心感につながります。
コミュニケーション能力
高齢者は人との関わりを大切にし、丁寧な会話を心がける傾向があります。この特性はコールセンター業務と親和性が高いと言えます。
労働意欲の安定性
「生活の張り」や「社会参加」を目的に働く高齢者は、金銭的報酬だけでなく、働くこと自体に意義を見出す場合が多く、そのため、離職率が高いとされるコールセンターにおいて、安定的な労働力となり得ます。
一方で、加齢に伴う体力やITスキルへの不安も否めません。視力/聴力の低下、タイピング速度の低下、システム操作への苦手意識などは、研修や環境整備によって補完する必要があります。
高齢者を雇用する際の注意点
高齢者雇用を成功させるには、以下の点に留意する必要があります。
業務環境の整備
長時間の着席業務は体力的な負担となるため、勤務シフトを短くしたり、休憩を柔軟に設定したりすることが有効です。また、業務端末について、文字サイズを拡大できるシステムや、操作がシンプルなインターフェースを導入することで、高齢者でも安心して業務に従事できます。
研修と教育
高齢者は新しい知識を吸収する速度が若年層に比べて緩やかな場合があります。研修内容は詰め込み式ではなく、段階的かつ反復的に行うことが望ましく、マニュアルやチェックリストを活用し、理解度に応じたフォローアップを行うことで定着率を高められます。
健康管理への配慮
高齢者は健康面のリスクが相対的に高いため、無理のない勤務体系が重要で、定期的な健康確認や、柔軟なシフト調整が求められます。
職場内コミュニケーション
若年層と高齢者が混在する職場では、価値観や働き方の違いから摩擦が生じることもあります。管理者には、双方の強みを活かし、互いに学び合える雰囲気を醸成することが求められます。また、高齢者の知見を共有する「ナレッジシェア」の仕組みを作るのも有効です。
高齢者雇用の成功例
高齢者雇用を検討する際には、これまで高齢者雇用を積極的に進めて成功した企業の事例がとても参考になります。
西松屋(生産性の向上)
生産性の向上の成功例としては、子供服の西松屋が上げられます。西松屋の店舗スタッフの約4割がシニア従業員(60歳以上)で、その接客については、お客様から「一緒に連れてきた孫への対応が自然(好感)」と高い評価を得ています。
加藤製作所(稼働率の向上)
稼働率の向上の観点では、岐阜県中津川市にある加藤製作所の高齢者雇用の事例が成功例と言えます。「意欲のある人求めます。ただし60歳以上」というキャッチフレーズで高齢者を対象に土日のみ勤務の採用募集をかけ、求人数の10倍の応募があり、工場の稼働率UPに成功しています。
ご紹介した2社はコールセンター事業の事例ではありませんが、「稼働率の向上」と「生産性の向上」の観点での高齢者雇用の成功例として見習うべき点が多い取り組みです。WEB上に関連記事が掲載されていますので、ご興味ある方は、是非探してみてください。
まとめ
コールセンターにおける高齢者雇用は、深刻な人材不足を補うだけでなく、顧客満足度の向上や職場の多様性促進といった戦略的メリットをもたらします。
高齢者は、豊富な人生経験や安定した労働意欲を持ち、特に顧客接点において大きな強みを発揮できます。一方で、体力面・ITスキル面での課題も存在するため、業務環境の整備や教育方法の工夫が不可欠です。管理者は、高齢者従業員を単なる「補助戦力」として捉えるのではなく、「顧客との関係性を強化するパートナー」として位置づけることが重要です。
前出の成功事例が示すように、適切な環境と仕組みを整えれば、企業に新たな価値をもたらす高齢者雇用は、今後のコールセンター経営において、高齢者雇用は持続可能な成長を支える有力な選択肢となるでしょう。
CCMLABO運営企業のアイビーシステム株式会社は、高齢者の方の特性を理解しながら、コールセンターの課題解決に向け、共存する職場環境を構築していきたいと考え、高齢者雇用の取り組みを加速してすすめています。
CCMLABOの運営会社 アイビーシステム株式会社はこちらから