少子高齢化や働き方改革の推進などにより、日本では多くの業界で人手不足が深刻化しています。その中でも、サービス業は特に人手不足が深刻な状況にあります。帝国データバンクの調査によると、2023年のサービス業の正社員の人手不足感は51.4%、非正社員は30.7%となっています。
コールセンターでも人手不足はサービス品質に影響する深刻な問題となっています。今回はコールセンターの人手不足の原因と、人材獲得のために採用プロセスでどのような工夫をすれば良いかについて解説したいと思います。
コールセンターの人手不足の現状
コールセンターの有効求人倍率
コールセンターの有効求人倍率は常に1.0倍を超えています。有効求人倍率とは、求職者1人に対して何件の求人があるかを示す指標です。求人数を求職者数で割って求められます。有効求人倍率が1.0
倍を上回れば、求職者よりも求人が多く、売り手市場であると言えます。
コールセンターの離職率
また、一般的にコールセンターの離職率は30%程度と言われており、他業種と比較して高い傾向にあります。離職率とは、一定期間に退職した従業員の割合を示す指標です。一般的には、1年間の離職者数を1年前の従業員数で割って求められます。売り手市場で人材の獲得が難しいにも関わらず離職率は下がっていないため、コールセンターは人手不足に陥っているといえます。
コールセンターの人手不足がビジネスに及ぼす影響
コールセンターが人手不足になると、お客様に対してサービスレベルを下げたり、施策を縮小したりするなど、顧客満足度の低下や機会損失の発生、延いては事業成長に影響を及ぼしてしまいます。売るものはあっても売る人がいない、売ってもアフターサービスができないから売れない、その様な事が実際起こり始めており、これからさらに増えてくることが予想されます。
コールセンターが人手不足になる理由
コールセンターが人手不足になってしまう理由として、仕事に対するネガティブな印象があります。
実際は個々の会社によって異なるにも関わらず、ネガティブなイメージが先行すると働き手がコールセンターの仕事に応募すること自体を敬遠してしまいます。
コールセンターに関するネガティブな印象①:ストレスが多い
コールセンターの業務は、商品の注文を受け付けたり企業への問い合わせに回答したり多岐に渡ります。しかし、コールセンターの仕事がクレーム対応等の感情労働の要素が強い仕事だけだと勘違いされ、仕事のストレスのみが注目されてしまうこともあります。
コールセンターに関するネガティブな印象②:覚えることが多い
コールセンターでは、顧客からのさまざまな問い合わせに対応する必要があります。そのため、膨大なマニュアルを読み込んで幅広い対応方法をすべて覚えなければいけないという印象を持つ人もいます。
コールセンターに関するネガティブな印象③:単調な仕事
コールセンターの業務は、細かいことをたくさん覚えなければいけないにも関わらず、マニュアルに沿って対応することが多いため、スキルが身につきにくいという声も聞かれます。また、長期的なキャリア形成が難しいというというイメージもあるようです。
コールセンターの仕事のやりがい
実際にはコールセンターの仕事は顧客企業と消費者をつなぐやりがいのある仕事です。具体的なやりがいを3つほどご紹介します。
人の役に立つ喜び
コールセンターの仕事は、顧客からの問い合わせやクレームに対応する業務です。そのため、顧客の困りごとを解決したり、疑問を解消したりすることで、直接的に人の役に立つことができます。この「人の役に立つ」という喜びは、コールセンターの仕事の大きな魅力と言えるでしょう。
幅広いスキルが身につく
先述のネガティブなイメージの中に「単調な仕事」というものがありましたが、実際には1件として同じ応対はなく、顧客のさまざまなニーズに対応するために、幅広い知識やスキルが求められます。例えば、商品やサービスの内容や魅力を伝えるスキル、クレームに対応するために論理的に筋道立てて説明をするスキル、そして何より相手の求めていることを正確に理解するための傾聴する力が身に付きます。これらのスキルを身につけることで、仕事の幅が広がり、キャリアアップにもつながります。
多様な人に出会える
コールセンターの仕事では、さまざまな年齢層や職業の人々と出会うことができます。そのため、自分の考えに固執するとうまく応対できないことが多くあります。裏を返せば、さまざまな価値観や考え方に触れることができるため自分の視野を広げることができるでしょう。
コールセンターの採用プロセスで工夫すべきポイント
人手不足を解消するためには、人材獲得、つまり採用に力を入れる必要があります。採用というと企業視点では応募者を審査するイメージが強いですが、人手不足の現代においては、採用プロセスで仕事の魅力を伝え入社意欲を高めることが必須の取り組みです。コールセンターの採用においても、採用プロセスの各段階で仕事のやりがいや面白さを求職者に伝える必要があります。
採用プロセス①募集
募集のプロセスでやること
求人媒体や自社サイトなどに求人票を掲載することで、応募者を募ります。求人票には法律で決められたルールがあり、職種や勤務地、給与、待遇などの情報を記載します。しかし、これらの内容は最低限記載しなければいけない内容であり、十分ではありません。
募集のプロセスの工夫
求人票にはこの仕事にどのようなやりがいがあるのかといった内容はもちろん、具体的に何をするのか、研修などのサポートはどうなっているのかをきちんと記載することで、求職者の不安を取り除き応募の敷居を下げることが重要です。
採用プロセス②応募書類の選考
書類選考のプロセスでやること
応募者から提出された履歴書や職務経歴書を、書類選考で選考します。書類選考では、応募者の基本情報やスキル、経験などをチェックします。
書類選考で気をつけること
書類選考時にコールセンターの仕事に直接繋がるスキルや経験だけで判断しようとすると、母集団が経験者に絞られてしまい採用が難航します。類似の職務経験、例えば飲食店の接客業や営業等の経験があれば、まず面接に進んでもらい、仕事の魅力を伝える場を作ることが大切です。
採用プロセス③面接・内定〜入社
面接・内定〜入社のプロセスでやること
面接では、応募者の人柄やスキル、コミュニケーション能力などを評価します。面接の結果、採用を決定した応募者に対して、内定を通知します。内定通知書には、入社日や勤務地、給与、待遇などの情報が記載されます。内定者から入社意思を確認した後、入社手続きを行います。
面接・内定〜入社のプロセスの工夫
面接では、選考と仕事の魅力化を併せて実施することが望ましいです。実際に働いてもらう仕事をしている先輩社員が面接官に加わるのはもちろんのこと、仕事していて辛かったエピソードなどを紹介し、一緒に乗り越えていけそうかを議論するというアプローチもあります。また面接後に職場見学を実施したりすることで自分がここで働くイメージを具体化してもらうことも有効です。
また、内定を出した応募者は高い確率で他者からも内定をもらっています。自分たちが魅力的に感じた人ですから、当然競合他者も魅力的に感じているはずです。そのため、内定後入社まで放っておくと直前で内定を辞退されてしまい、稼働計画が崩れてしまうという事態になりかねません。自社の事例や働いている様子がわかるブログ等を紹介するなど、入社までの期間に自社に対する理解を深めてもらうことで、内定を辞退されてしまうリスクを下げるようにすることが重要です。
まとめ
仕事のやりがいや面白さを伝えることを通じて、コールセンターのネガティブな印象を払拭することが人手不足解消の第一歩となります。
CCMLABOの運営会社「アイビーシステム株式会社」でも、傾聴の姿勢でお客様に寄り添い、一緒に課題を解決することでお客様に喜んでいただける、という大きなやりがいを積極的に採用プロセスの中で伝えていきたいと思います。