AI(人工知能)技術の進歩はコールセンターの対応品質や生産性にも大きな変化をもたらすことが期待されています。AIの中でも言葉を扱う分野である自然言語処理の最新技術であるChatGPTというサービスが2022年末に登場しました。非常に高精度のAIで、リリース後わずか2ヶ月で1億人のアクティブユーザーを獲得しています。ChatGPTとはどのようなサービスなのでしょうか。今回はコールセンターにおける活用の可能性にも触れながら解説したいと思います。
CharGPTとは
ChatGPTとは
ChatGPTとは、サンフランシスコに本社を構えるAI(人工知能)研究所OpenAIが開発した対話型AIツール(プラットフォーム)です。GPTとはGenerative Pre-trained Transfomerの略で、自然言語処理(テキストマイニング)の分野を進化させたTransformerというAIモデルを使った文章生成技術のことです。OpenAIがこのGPTを対話型で使用できるAIツールとして開発・提供しているサービスがChatGPTです。
ChatGPTの使用方法は
ChatGPTはアメリカ発のサービスですが、日本語にも対応しており、誰でも使用することができます。OpenAIのアカウントを作成してWebブラウザで使用するもので、無料で使用することもできます。※負荷が集中した際に優先的に使用できる有償プランもあります。
ChatGPTの具体的な使用例
では、ChatGPTは具体的にどのように使うのでしょうか。OpenAIのWebサイトにアクセスし、質問を入力すると、その場で回答を生成して表示してくれます。例えば、ChatGPTに「ChatGPTってなに?」と聞いてみた回答は次のとおりです。
もう少し、日常的な質問を投げかけてみます。(動画は等倍速です。)
動画で分かるとおり、その場でAIが回答の文章を生成していますが、まるで人間が回答しているような結果を返してくれることがわかります。
ChatGPTにできること
ChatGPTを使って、いろいろな作業を自動化することが可能です。具体的な用途をいくつかご紹介します。
文章生成
ChatGPTの代表的な用途の1つが、文章生成です。ChatGPTを使えば大量の文章を短時間で作成することができます。例えば、Webサイトやアプリケーションにおける説明文のドラフト作成や、マーケティングキャンペーンなどで使用するキャッチコピー案を大量に作成する、などの用途が考えられます。ChatGPTの課題は後述しますが、現状ではChatGPTでドラフトを作成し、人間が内容をチェックする必要がありそうです。
質疑応答
ChatGPTが対話側ツールであるという特徴を活かして、質問に対してリアルタイムで回答する質疑応答システムとして利用することが可能です。例えば、今日訪問予定の複数の顧客の住所を一度に質問して回答してもらうなど、いちいち複数のHPをインターネットで調べなくとも、情報を収集することが可能になります。
テキスト翻訳
ChatGPTは多言語に対応していますので、テキストを入力して翻訳したい言語を指定することで、翻訳を作成することも可能です。高度な言語モデルでリアルタイムに翻訳を実施するため、翻訳の質が向上し、時間も短縮できます。
要約テキストの作成
ビジネス用語など概念的な言葉の意味が知りたいなどに言葉の意味と具体例などを複数サイトで検索するのではなく、ChatGPTに依頼することで簡単にわかりやすい要約を作成してくれるという用途も考えられます。
プログラミング
プログラミングコードを書いてくれるというのも、ChatGPTの画期的な使い方の一つです。目的と言語を入力し、出力されたプログラムに対して追加の指示をすることで、プログラマーに依頼しているようにChatGPTがプログラミングしてくれます。実際に、有名なスマートフォンアプリをChatGPTを使って数時間で作成してしまったという事例も出ており、システム開発の高速化への期待も高まっています。
ChatGPTの課題
人間のような回答を作成できるChatGPTですが、いくつかの課題もあります。
ChatGPTの回答は正しい情報とは限らない
ChatGPTの課題としてまず挙げられるのが、回答の内容が正確な情報でない場合があるという点です。ChatGPTのAIが学習しているデータに時間差があること、文章を生成するアルゴリズムが正しくない情報を引用して回答を作成してしまう恐れがあること、が主な理由です。したがって、ChatGPTが作成した回答は現時点では人間がチェックする必要があります。
再現性がない
ChatGPTに同じ質問を入力しても、使用するたびに異なる回答が帰ってきます。例えば使用例のところであげた「犬と猫の違いを教えて」という質問に対して、録画のテストをした時にChatGPTが作成したのは、ペットとして犬と猫の違いでした。一つの質問に対して毎回回答が変わってしまうと用途によっては使いにくい場合があります。
コンピューターウイルスやサーバー攻撃に利用されないか
ChatGPTがプログラミングに使用できることは先述したとおりですが、悪意のあるユーザーがコンピューターウイルスを作成したり、サーバー攻撃に使用したりする恐れはないのでしょうか。ChatGPTには個人情報や機密情報を窃取するようなプログラムを書かないようにフィルターがかけられていますが、悪意あるプログラムの一部を作成することを完全に抑止できているわけではなさそうです。
人間の仕事を奪わないか
ChatGPTが文章制作の現場に導入されることで、同様の仕事に従事していた人の職を奪う可能性も否定できません。また、大学のレポートなどを作成することに利用するケースも想定されるため、有名大学が次々とChatGPTを使用したレポート作成を禁止しする規則を作ったり、ChatGPTによって書かれたレポートを判別するAIを独自に作成したりと、対応が進められています。
課題への対応
技術の進歩と利用者のリテラシーの進化の両面から、今後上記のような課題に対する対応策が講じられていくことを予想されます。
コールセンターにおけるChatGPT活用の可能性
ChatGPTがビジネスの現場で活用されることで人間の生産性を高めることができる大きな可能性を秘めています。2023年3月には、Web画面での入力以外にAPIによる利用が開始されるなど、システムへの組み込みも含めた応用例は今後増えていきそうです。例えばコールセンターでChatGPTを使用する場合、どのような利用ケースが考えられるでしょうか。いくつかの例を解説してみたいと思います。
(本記事では音声認識技術と組み合わせた活用法ではなく、自然言語処理技術としての活用方法を考えてみたいと思います。)
FAQ作成
コールセンターにおけるChatGPTの利用ケースとして、高度なFAQの作成が考えられます。コールセンター業務の中でもカスタマーサポートなどの分野では、膨大な商品情報からお客様の質問に合わせた回答を事前にマニュアル・FAQ化しておくことが求められますが、よくあるお客様の質問を一覧かするだけでChatGPTが回答を埋めてくれるとしたら、FAQの作成・更新に必要な時間は大幅に短縮されます。もちろんChatGPTをそのまま使うのではなく、カスタマイズしたり、情報の正誤チェックをする必要があるため、現状では劇的な工数削減になるかどうか未知数の部分もありますが、コールセンター現場の生産性を高めることができる可能性は十分にあります。
チャットボット
FAQの作成からもう一歩踏み込んで、チャットボットの回答をシナリオベースからChatGPTベースに変えることができれば、お客様の非定型な質問にも柔軟に一次回答を用意してくれるようになるかもしれません。一次回答での解決率を上げることでコールセンターで対応できるお客様の総数を増やすことができればコールセンター現場の生産性を大きく向上させることができるでしょう。先述したとおり、APIモデルが発表されたことによりシステム連携が可能となったため、チャットボットへの組み込みという活用方法も現実味を帯びてきています。
ロールプレイング
もう一つ、やや発展的な利用ケースとして、AG(エージェント)の育成への活用も考えられます。ChatGPTは対話形式での使用できるため、応用することでお客様を再現し、ロールプレイングの相手をするような教材を作ることができる可能性もあります。コールセンターではSV(スーパーバイザー:管理者)が研修を担当する場合がほとんどですが、ロールプレイとなると一度に一人しか対応できないため、研修に多くの時間を割く必要がありました。AIを相手にロールプレイの研修ができるようになれば、多くのAGが同時に研修を受けることができるようになり、育成期間を短くすることができます。
まとめ
対話型で人間のような高い精度の回答を返してくれるChatGPTの登場で、AIを使ったコミュニケーションは飛躍的に進化しました。課題への対応は必要ですが、コールセンターの現場にもChatGPTを応用したAIによる生産性向上のチャンスがやってくる可能性は大いにあると言えます。
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