【第1回】フルフィルメントを顧客接点としてとらえる!トータルコーディネート徹底解説!

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みなさんはフルフィルメントという言葉をご存知でしょうか。商品の注文を受けてからお客様の手元に商品が届き、代金の支払いが完了するまでの一連のプロセスのことを指すこの言葉です。今回から2回に分けて、フルフィルメントとはどんなプロセスか、その重要性やトータルコーディネートのポイントを徹底解説します。

フルフィルメント業務徹底分解

フルフィルメントとは

フルフィルメントには元々、履行・遂行といった意味があります。

【fulfillment】履行、遂行、実践、実現、達成、成就

転じて、通信販売において商品の注文を受けてからお客様の手元に商品が届き、代金の支払いが完了するまでの一連のプロセスのことを指します。通信販売の爆発的な成長に伴い、フルフィルメント業務を代行するサービスが増えており、FBA(Fulfillment By Amazon)などが有名です。

よく似た言葉に3PL(3rd Party Logistics)というものもあります。フルフィルメントと3PLの違いはその対応範囲です。3PLが物流業務に関する部分のアウトソースを意味するのに対して、フルフィルメントはより広い範囲をカバーしています。具体的にどのような業務がフルフィルメントに含まれるのか、業務プロセスを見てみましょう。

フルフィルメントの業務プロセス

フルフィルメント業務を細分化すると、「商品の発注・入荷管理」、「商品の適切な保管・管理」、「注文受付・受注処理」、「商品のピッキング・検品作業」、「梱包・発送」、「決済業務」、「代金回収」、「返品対応等アフターケア」となります。

一般的には広告等のキャンペーンや需要予測、顧客分析などのマーケティング業務は含みません。
(オプションでマーケティング関連業務の一部を提供しているサービスもあります。)

一般的なフルフィルメント業務のプロセスは下図のようになります。

上の図ではフルフィルメント業務のプロセスだけを細分化しています。ここで重要なのはフルフィルメント業務がマーケティング戦略の下にある点です。その理由はこの記事の後半にご説明します。

フルフィルメント業務をアウトソースするメリット・デメリット

フルフィルメント業務をアウトソースするメリット

フルフィルメント業務の仕組みを自社で構築するのではなく、パートナーとなる企業にアウトソースする主なメリットは次の2つです。

他社との差別化に注力できる

自社の商品をお客様に選択してもらうためには、他社との差別化が重要です。魅力的な商品を世の中に出すためには、商品企画・研究開発にこだわることが不可欠。また、開発した商品の魅力をどの媒体でどのように伝えるかというマーケティング戦略・マーケティング施策も重要になります。

他社との差別化につながる業務は自社の収益に直結するため、これらの活動に注力できることが、フルフィルメント業務をアウトソースすることの最大のメリットといえます。

ここであえて補足したいのは、フルフィルメントは重要な業務であるということです。ポイントは役割分担。限られた自社のリソースを商品企画やマーケティングに割り当て、フルフィルメント業務を適切なパートナーにアウトソースすることがバリューチェーン全体を最適化することにつながるのです。

専門家に任せることで理想のフルフィルメント業務をすぐに実現できる

フルフィルメント業務の内容は多岐にわたります。全てのプロセスでトップレベルのクオリティを発揮する人材を確保、もしくは育成して仕組みを内製するには時間とコストがかかります。しかし、ビジネスは待ってくれません。

事業成長を加速させるためには各プロセスのプロであるパートナーに自社の戦略と意思を伝え、スピード感を持って実現してもらうことが重要です。

また、適切なパートナーを選べば、自社で仕組みを構築するよりもはるかに多様な決済や配送のバリエーションをもつことができます。この多様性が顧客の利便性に繋がり、ひいては顧客満足につながるのです。

フルフィルメント業務をアウトソースするデメリット

メリットがあればデメリットもあります。フルフィルメント業務をアウトソースする主なデメリットは次の2つです。

複数ベンダーを束ねる管理スキルが必

フルフィルメント業務をアウトソースするとき、自社の要求の全てを一つのベンダーに任せられない場合、複数のベンダーを束ねる必要があります。

フルフィルメント業務は売上、入金、在庫管理などに影響するため、基幹システムとの連携が必要になるケースが多くあります。システム開発会社やコールセンターなど異なるパートナーを束ねるにはそれぞれの専門家の主張を正しく理解し、マネジメントすることが重要です。

お客様の声を吸い上げるために仕組みを意識して作ることが必要

商品申込みの受付、クレーム処理、返品対応業務をアウトソースするということは、お客様とのコミュニケーションをアウトソースすると言うことです。

先述の通り、専門家に任せた方がクオリティが高くなる反面、「お客様は何が不満だったのか」、「コミュニケーションのどこにトラブルの原因があったのか」、「自社の商品をどのように改善すればより喜んでもらえるか」といったお客様の声を把握しにくくなります。トラブルの対応策や商品の改善策を講じるタイミングが遅れると事業成長が鈍化する原因になりかねません。

お客様とのコミュニケーションをアウトソースする場合は、信頼できるパートナー企業に依頼し、お客様の声をマーケティングに役立つ形に整理して定期的に報告してもらうなど、意識して仕組みづくりをすることが必要になります。

フルフィルメントを顧客接点としてとらえる

ここまで、フルフィルメント業務とはなにか、アウトソースする場合のメリット、デメリットを説明してきましたが、もう一歩踏み込んでフルフィルメント業務の意義を考えてみましょう。

自社商品の顧客体験はどこから始まるか

通信販売において、自社商品の顧客体験はどこから始まるのでしょう。商品を初めて見た時、商品を買うとき、商品を使い始めるとき、様々な考え方があると思います。これが正解というものはなく、企業の理念やマーケティング戦略によって解釈が異なるでしょう。

では、顧客体験をバーチャルとリアルという軸で分けるとどうでしょう。
バーチャルな顧客体験は商品をテレビやインターネットで見つけた時、言い換えれば商品を認知した時に始まります。

次にやってくるバーチャルとリアルの境目、つまりバーチャルな顧客体験からリアルな顧客体験に移行するタイミングはどこかといえば、お客様が肉眼で初めて商品を見た瞬間、ということになります。つまり、リアルな顧客体験は商品がお客様の手元に届いた瞬間から始まるわけです。

ヒトも商品も第一印象が重要

通信販売を利用したことがない、という人は少ないでしょう。近年は通信販売のチャネル(=店舗という物理的なチャネルを経由しない購買方法)も多様化しています。伝統的なテレビ、ラジオ等で商品の広告を放送して電話で受付をする形式、Amazonや楽天などインターネット上のマーケットプレイスに出店する形式、さらにはインターネットオークションやフリーマーケットアプリのようにC2Cの形式もあります。

初めて商品を購入した時の印象は、その後の企業とお客様の関係性を決定します。

  • 不要な商品を押し売りされた
  • 届いた商品が間違っている
  • 楽しみにしていた商品が期日通りに自宅に届かない
  • 箱が潰れている、梱包が雑
  • 返品手続きが煩雑で対応が遅い
  • 問い合わせの電話を何度かけても、電話出ない 等々

これらの不満は全てフルフィルメント業務のクオリティによって生まれるものです。このような印象をもたれた場合、お客様がその企業のファンになることはありません。

フルフィルメント業務を顧客満足を生み出す最初の接点=リアルな顧客体験の始点ととらえると、先述の業務プロセスの関係図の中でマーケティング戦略の下にフルフィルメント業務があった意味がお分かりいただけるかと思います。

フルフィルメント業務もマーケティング戦略実現の一つの重要なパートだと考えるべきなのです。

まとめ

お客様の手元に商品が届くいたときお客様がどのような気持ちになるかを想定し、最適なフルフィルメント業務を設計・実施することが自社の理想の顧客体験を提供するために重要です。

次回は理想の顧客体験のために、フルフィルメント業務をトータルコーディネートする際のポイントを実際の事例を交えてご紹介します。

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